Scapegoat +++イラストとSS(本編では有りません)の展示。ssは2本。ギャグ入ってるキャラ性格紹介も兼ねたSSは下の方に有ります。

<Scapegoat>について
◆歴代の「scapegoat」達の大半は自殺している。
人々の罪を背負うという事は、「生きてゆく者が犯すであろう罪」と「死んでゆく者が犯してきた罪」その両方を代わりに請け負い、自ら罪を犯すということである。
其れ故、彼らはその罪の重さに耐え切れず、自らの命を絶つ者が大半を占める。

◆最初のscapegoatは世界の中心に唯一人だけ現れたという。  
彼自身の背負う罪はあまりにも大きく重く、彼の命が尽きた時、聖痕は自ら意思を持ったかのように、彼の罪と想いを乗せ、四方に散った。
其れが現在に続くscapegoatの始まりである。

◆scapegoatの痣を持つ者は、特殊な力と共に制限ある自由という名の縛めを天から授かることになる。  
此の縛めは、人々の罪から逃れようとする魂を束縛し、任務を放棄することを赦さない。  
それ故、女神の慈悲無くして、自ら命を絶つ事は出来ない。  
女神の慈悲はscapegoatの一生の中で一度だけ訪れる。  
罪を背負い、その重さに負け、身動きの取れなくなった者に一度だけ赦される、己の為だけに生きる一瞬。  
大抵のscapegoatは、此の女神の慈悲に縋り、自らの一生を終わらせた。

イラスト・・・絵:誉  彩色・編集・加工:管理人S

ss 作:管理人S ※ssと云っても作品の世界観等を纏めたりしただけです。

荒廃した世界。

暮れなずむ夕陽を受け、其の教会は聳え立つ。
4人の「贖罪の山羊」を内包する其れは、沈黙の中、時と共に闇へと沈んでゆく。

 

遥か昔、此の世界には「光の女神の時代」と呼ばれる時が存在した。

女神・其れに仕える天使・そして人間が存在し、「光の女神」によって世界は一つに統括されようとしていた時代だった。

然し其の直前訪れたもの         女神の死。

彼女によって纏まりかけていた世界は混沌へと陥り、彼女の力によって秩序を保っていた天使と人間は勢力争いを始め、互いの其の手に武器を掲げ戦いを繰り広げる。
そして此の戦乱の中、全ての天使が其の翼…天使としての資格を腐敗させ、失うこととなった。
此の出来事により世界は荒廃の一途を辿り、其の侭現在         光の女神への信仰を主流とした此の時代へと物語は紡がれる。

光の女神。
全てを統括し救済する女神として崇められている存在。
此の世界中に光の女神の崇拝と、其の教えを説く為の教会、そして牧師が存在する。

其れと同時に存在するもう一人の女神と教会。

闇の女神。
闇の教会。
其れは「邪教」とされ、表立っては信仰されることは無い。

そんな「光」と「闇」を象徴する特殊な痣を持って生まれる者達が、此の世界には居た。

Stigma     

聖痕と呼ばれるそれらを持って生まれる子供は、「落とし子」と呼ばれている。
どのようなことが原因で其れが現れるのかは、全くの不明である。
が、只一つ云える事は、それらは「本人の意思には関係なく現れるもの」であるということだ。
そしてどちらの聖痕を持って生まれたかによって、其の子の人生は大きく変わる。

「光の聖痕」…光の女神を模した様な其れを持てば、其の人は「光の女神の子」として健康な体を約束され、光の女神の恩恵を受けた者として、恵まれた環境下に置かれるのが常である。

然し「闇の聖痕」…丁度「光の聖痕」を逆さにした、闇の女神を現す其れを負ってしまった者は、病弱であり、「光の女神」への信仰が主流となっている此の時代で、「闇の女神」を象徴する聖痕を持つ彼らは虐げられる対象となった。

そう…「闇の聖痕」を持った子供が生まれた場合、其の家族は殺す・棄てる・ひた隠しにして育てるという選択を迫られる程に、其の迫害は厳しいものであった。
そんな「闇の聖痕」を持つ者や、彼らに加担する者達によって作り出された組織が「レジスタンス」である。
彼らは    を目的とし、各地に点在し様々な活動を行い世界の在り方を変えようとしていた。

其の様な争いを生み、現れた人の生をも決めてしまうような「2つ」の聖痕の存在。
光と闇…「2つ」きりの。

殆どの者がそう思っていた。
然しまだ、此の世界には「聖痕」が存在していた。
世界に4種類…それぞれ唯一人だけしか持つ者が存在しない、突然変異の聖痕。


彼の聖痕の存在は明かされては居ないが、其の存在を知る極一部の者は彼らをこう呼んでいた。

「Scapegoat」     「贖罪の山羊」

東西南北で「1人ずつ」産まれる「Scapegoat」は、産まれる時代や方角以外の場所、其れを持って生まれる理由等は一切謎という存在である。  
只、そんな彼らにも唯一明らかな事が有った。
其れは其の呼び名…「Scapegoat」と呼ばれる由来。

「人々の罪を代わりに請け負う」存在であり、 「罪を請け負うことで、特殊な力と制限の有る自由を天に与えられた」存在である。

其の事が「贖罪の山羊」に充てられ、「Scapegoat」と呼ばれる所以となっていること。
そして其の意味の侭に、「罪」を背負いながら彼らは「仕事」を行うのだ。


闇に沈んだ教会には、彼らが存在していた。
4人の「Scapegoat」が。
牧師として、Scapegoatとして存在する彼ら。
一見、相反するような其の2つの生き方の成す事柄は、同じ意味を持って居るのかも知れない。

教会の窓をぼんやりと照らしていた最後の灯りが消される。
闇の濃さが増してゆく。
其の中で動き出す4つの影。
綴り成されてゆく物語。


其れは眠れない貴方の為に語られる。

貴方が眠りに落ちるまで。

此の世界の夜が明けるまで。

 

 

↓キャラ性格紹介も兼ねた、ギャグ要素有りのSS…作:管理人S

 

新しい生まれたばかりの太陽が、彼方に見える険しい山並みの向こうから昇ってくる。
茜色の光が、町を照らし出す。
小鳥のさざめく声。
朝靄の冷たい空気の中を澄んだ鐘の音が鳴り響く。
其の鐘の音は、其処彼処に滞る視えない闇や穢れを清めるかの如く、町中に波紋の様に広がってゆく。
人々は其れを聞き、新しい朝の訪れを知るのだ。
そして其の小さな町は目覚め始める。

朝を告げる鐘の音   その音を生み出す鐘は、町外れの教会に有った。

光の女神を祀る教会。

外観は白い外壁のシンプルな建築物であるが、居住施設と庭も含まれている為に小さな町の教会の割には敷地は案外大きい。
両側壁面には、光の女神を模したステンドグラスが1つずつ嵌め込んであり、屋根には光の女神の教会という事を示す「光の十字架」が朝日に照らされて眩い光を反射していた。

其の教会には4人の牧師と牧師見習い、保健師が住んでいた。
牧師であり乍ら、一見すると一癖も二癖も有りそうな感じのバラバラな印象を受ける4人と2人だ。

外から差し込む光に、ステンドグラスが床に鮮やかな影を作る。
教会の主となる聖堂。
祈りを捧げる場。
其処に4人の人物が居た。

一人は牧師長である紫の瞳の背の高い男。
此の教会に住んでいる者の中では最も長身である。
黒に近い茶の髪を腰近くまで伸ばした彼は厭世的な雰囲気を纏い、掛けている眼鏡が更に人を寄せ付けない雰囲気を増長していた。

「シアン。オレ、今日は朝から用事があるんだけど〜…」

牧師長の男はそう声を掛けられた。
語尾を伸ばし、少し離れた場所から声を掛けてくる相手に、シアンは眉を寄せてぶっきらぼうに答える。

「朝っぱらから其の喋り方と冗談は寄せ。黙ってさっさと掃除をしろ。」

冷たい返答を貰った相手は、少し長めのプラチナブロンドにアイスブルーの瞳、左目の下に2つ並ぶ黒子が印象的な、優男風な男。
軽いノリで、本音は何処にあるのか今ひとつ分からない。
どんなにだらしなくしていようと動きの端々に両家育ちという事が時折垣間見える彼は、ふとした仕種が妙な色香を漂わせる時が有り、巷では妙な噂や浮名を流している。

「そうですよ。昨日も其の前も同じようなことを言って、掃除をサボりましたよね?キリ。」

屈んでいた身体を起こして、笑顔で同調する男。
柔らかい長めの透ける様な薄い茶の髪に、澄んだ茶色の瞳。
細身の彼はいつも微笑を湛えているが、本当の笑顔であるかどうかは分からない。
柔らかく優しい雰囲気を纏うが、何処か何かを諦めたような、何事にも執着心の無さそうな印象を受ける。
然し其れを他人に悟らせる事は殆ど無い。

「ワタシ見たんですよね。キリ、アナタが昨日『    』の   さんと朝から・・・・」

「あーーーっ!!ストップ!『待った』だ、アマネ!!それ以上はストップ・・・」

慌ててアマネが続きを口にしようとするのを止めるキリ。
其処に飛んでくる1枚の雑巾。
上手くコントロールされた其れは、キリの横っ面をはたく。

「っ!きたねーだろ?!誰だよ?!・・・・って、レキかよ。」

「さっさとやれ。」

一言冷たく言い放つと、キリを見ること無くそのまま黙々と手を動かして掃除を進める彼は、短く切った灰色の髪に赤い瞳、白い肌というアルビノを髣髴とさせる色彩を有している。
言葉少なで愛想が無く近寄り難い一匹狼的雰囲気を持つが、掃除をしている様子からすると根は真面目な様だ。

「あー、はいはい。分かりましたよ。掃除するよ、すればいいんだろ。」

キリは、諦めた風に投げつけられた雑巾を手にしようとした。
そして投げた相手に向かって一言。

「このヘンタイが。」

負け惜しみのようにぼそりと呟かれた言葉。
どうやら、レキが血を見る事に快楽を感じる性質に関して云っているらしい。
然しそれが相手の耳に届く。

「・・・・」

椅子を拭いていたレキが、静かに起き上がった。
そしてキリに鋭い視線を向ける。

「何か云ったか、両刀野郎。」

「いいえ、なんでも御座居ませんよ。男にモテモテなレキ様。」

睨み付けるレキと、皮肉げな笑みを唇に浮かべるキリ。
朝から一触即発な雰囲気が漂う。
シアンは「こいつらは・・・」と言う様な表情を浮かべ、アマネは笑顔で其の状況を楽しむかの様に自分の安全領域を確保しつつ眺めていた。
其処へ飛んでくる新たな2枚の雑巾。
そのまま2人の後頭部へクリーンヒットする。

「ちょっと!何サボってんの?!早く掃除しちゃってよ!!」

飛んでくる耳障りではない程度の高めの声。
声のする方向へ顔を向けると、セミロングのシャンパンゴールドの髪を2つに結い分けた、菫色の瞳の女の子が箒を片手に立っていた。
歳は17。
可愛らしい顔立ちでほわん、とした雰囲気だが、こう見えて立派な保健師である。
此の教会唯一の女性で、或る意味「絶対権力者」。
そして何処か一筋縄ではいかない所がある。

「もう怪我して帰って来たって治してあげないからね!」

可愛らしい顔に怒りを含ませて声を飛ばす。

「アゲハ、ごめん〜。真面目に掃除するからさ。」

キリは途端に態度を軟化させる。
どうやら、唯一の治療者の「保健師」である以前に「可愛い」アゲハには逆らえないようだ。

こんなバカに付き合う事はない。
そう思ってレキも掃除を再開しようとするが、投げつけられた雑巾の事を思い出し、近くに有るだろうそれを探す。
が。

・・・・無い。

何故無いのか悟った彼は、そのまま無言で掃除を続けた。

 

未だアゲハとの会話を手を動かすこと無く続けようとするキリの後ろから差し出された手。

「・・・・はい。」

其の手には3枚の雑巾が握られている。
レキがキリに投げた雑巾と、アゲハがキリに投げた雑巾。
そしてもう1枚。
どうやらレキの元に投げられた雑巾を回収したのは其の人物らしい。

「!!」

気配も無く突然出された手に、キリは驚き振り向いた。

其処に経つのは前下がりの漆黒の髪に竜胆の瞳を持つ少年。
無言・無表情で目の前に出される其れをキリは引き攣った笑顔で受け取る。

「あ・・・有難う、カラグ。」

カラグと呼ばれた彼は、雑巾を手渡すとそのまま背を向け、壁に立てかけてたモップを片手に去る。

彼は牧師見習いで、一番最後に此の教会へやって来た。
アゲハとは歳が近い。
あまり喋らず、居るのか居ないのか分からないことが多い。
何を考えているのかもよく分からない。

ああ、吃驚した。
いつものことだけどサ。

キリが手渡された無駄に多い3枚の雑巾を見つめつつそんなことを思っていると、再びアゲハから(今度は皆に)声が飛んだ。

「取 り 敢 え ず!掃除が終わらないことには朝御飯食べさせないんだから!早く済ませてね!」

そう云い残し、アゲハは先に掃除用具を片付けキッチンへと向かった。

「キリ、早くしないと御飯が食べられませんよ。他の皆は殆ど終わりかけてますし、アナタ一人で残る羽目になっちゃいますよ?」

アマネにそう声を掛けられ、キリが周囲を見回すと皆掃除を終え掛けていた。

「え?マジかよ?ちょっと待っ・・・」

そう云いながら必死で手を動かす彼を尻目に、他の面々は次々と出て行く。
そしてがらんとした聖堂に残されたのは、キリ唯一人。

「皆冷たいよなぁ…。」

寂しそうに独り呟く。
然し傍から見ると何となく笑いを誘う光景。

「よしっ。掃除終わりっっ!」

碌に手を進めないまま勝手に掃除を「終了」とした彼は、雑巾を近くに有ったバケツに投げ入れて急いで皆の後を追う。  

 

 ―――――此れが物語の主人公となる人物達の朝。
一日の始まりである。

 

 

 

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